こんにちは,@PKです.
最近、雑務や実験が増えてきて忙しさのピークでしたが、在宅勤務になり自宅で論文を読んだり、考える時間が増えました.
考えることは重要とはいえ、実験しないとデータが出てこないので、なかなか難しいですね.
さて、少し前に話題になっていた「数でとらえる細胞生物学」を購入して読んでみました(同僚が買って手元に置いていたのをみて即購入しました).
自身はcell-assayの構築やスクリーニングが業務の中心なため、細胞生物学的な手法を使うことが多く、まずは気になっていたサイズ・濃度・絶対数などの項目を中心に読んでみましたが、本当に面白い本でした.
以下のような目次で、細胞の数に関する事柄を紹介しています.
モデル細胞としては大腸菌、酵母、動物細胞(HeLa)と、普段馴染みのある細胞たちが使われています.
この本がさらに素晴らしいのは、記載されている数値は全て、BioNumbersのサイトから入手することができることです.
本の中で紹介される数値にはBNIDという定量生物学のIDが付与されており、それらをBioNumbersで検索することでその数値とリファレンスをみることができます.
例えば、BioNumbersのサイトで「111494」を入力すると、典型的な細胞に関する数値の表をみることができます.
bionumbers.hms.harvard.edu
BioNumbersのプロジェクトは2007年から始まっていたようなのですが、知らなかったです…
本書で面白いなあと感じた、感覚的な理解の例をいくつか紹介します.
「HeLa細胞内で1nMの濃度の分子X」と言われても、1nMの濃度をイメージするのはなかなか難しいです.
本書では、以下の経験則が度々登場します.
1nMは細菌が占める体積あたりに1分子が含まれる割合とほぼ等しい
1nMと聞いてもイメージが湧かないのですが、細菌の占める体積に1分子が含まれる割合とほぼ同じだと言われると、なんとなくイメージできます.
絶対数の方が濃度よりも感覚的に理解しやすい、という本書の言葉に納得しました.
HeLa細胞は細菌の約1000倍の体積(BNID111494)ということを踏まえると.1nMという濃度は、HeLa細胞の中に約1000個の分子があることになります.1nMより、1000個ある、と言われた方が感覚的な理解が進みますよね.
こんな感じで、とにかく面白い本なので、読んだことない方は一読をお勧めします.
「mRNA とタンパク質どちらが大きいか」という本の紹介文の冒頭で挙げられている問いについても、塩基とアミノ酸の大きさと、一般的な分子サイズを知っておくと、簡単にイメージできるようになります.
実は、この本Freeのオンライン版があるので、中身が気になる方はこちらをみて、オンライン版で勉強するか、日本語訳の書籍を検討されても良いかもしれません.
普段仕事で使っているcell-assayなどもこれらの数の視点で見直してみると、見方が大きく変わってきそうです(ああ実験がしたい).