こんばんは,@PKです.
今回はTransfluor Assayの画像データセットを解析するCellProfilerのPipelineを紹介します.
CellProfilerは,HCAの画像解析を行うフリーソフトウェアです. CellProfiler | Free open-source software for measuring and analyzing cell images
こちらにCellProfilerの使い方がいくつか紹介してあるので,興味がある方は是非見てください.
www.t-kahi.com
画像データセットとTransluor Assayについて
今回紹介するTransfluor Assayの画像データはBBBCのデータセットを用いました.
data.broadinstitute.org
このデータセットではU2OSという細胞にbeta2 (b2AR) adrenergic receptoとarrestin-GFPを共発現させた評価系を用いています.
GPCRのリガンド刺激が加わるとβ-arrestinシグナルが活性化し,GPCRがinternalizationされるため細胞質全体の蛍光がドット状に変化します.
Transfluor Assayについては以下に詳細が記載されています.
Transfluor Assay | Molecular Devices
High-Content Screening of GPCR activation Using MetaXpress and AcuityXpress Software and the Transfluor Assay System | Molecular Devices
画像データは,1視野につき核染色とGFP染色がそれぞれ2枚ずつあり,4視野/1well,n=3でアゴニストの各濃度ポイントは以下のようになっております.
それぞれの濃度の染色画像を並べると,確かに濃度依存的に細胞質内のドットの数が増加していることがわかります.
このTransfluor Assayの解析にはいくつか方法があり,他の文献などでは,細胞質内のドットの数で評価をしています.
Multiplexed assays by high-content imaging for assessment of GPCR activity. - PubMed - NCBI
今回は細胞質内の蛍光値の最大値やテクスチャの情報を使ってでうまく評価できるかもな,と思ったので,細胞質全体の様々な特徴量を取得してアゴニストの濃度依存性が見えるかを確認していきます.
CellProfiler Pipeline
データセットとメタデータについて
データセットとメタデータはこちらにあります.
BBBC015: Human U2OS cells transfluor
メタデータは残念ながらCellProfilerですぐ使えないので,少し加工する必要があります.CellProfilerでメタデータを扱うにはこちらを参考にしてください.
【CellProfiler】Metadataモジュールを使って,画像とアッセイ情報を紐付ける - t_kahi’s blog
Pipelineの流れ
今回作成したPipelineは以下の通りです.
画像データの読み込みやメタデータの設定など基礎的な部分はこちらを参考にしてください.
【CellProfiler】Example pipelineで画像解析の基礎を学ぶ② - t_kahi’s blog
【CellProfiler】Metadataモジュールを使って,画像とアッセイ情報を紐付ける - t_kahi’s blog
また,「MeasureImageQuality」についても,以前の記事で紹介しているので割愛します.
【CellProfiler】【KNIME】MeasureImageQualityでぼやけた画像を検出し,データセットから除去する - t_kahi’s blog
「IdentifyPrimaryObjects」
まずは核領域の認識からです.
「IdentifyPrimaryObjects」の設定を以下に示します.
いくつかThreshold Methodを試したのですが,Minimum cross entropyを使うのが一番きれいに核を認識することができました.
核は丸い形をしているので,くっついている核は"Threshold strategy = Shape"で領域を分けています.
「IdentifySecondaryObjects」
核領域を認識できたので,核オブジェクトを目印に細胞領域を定義します.
こちらもMinimum cross entropyでオブジェクトの認識を行いました.
上記画像より,細胞領域を認識できているようです.
ただしGFP染色画像はドット状の細胞と,弱いシグナルで一様に染まるパターンがあります.
先ほどのはドット様のシグナルを示す細胞(agonist = 1000nM)で試したので,一番薄い濃度のサンプルでも細胞質が測定できるか確認しておきます.
どちらの場合でも細胞領域の認識はできているようです.
「IdentifyTertiaryObjects」
最後に細胞領域と核領域が定義できたので,細胞質領域を取得します.
今回取得したい細胞質(Cytoplasm)のオブジェクトを設定することができました.
その他
特徴量抽出は細胞質オブジェクトのGFP蛍光画像のみに絞って,蛍光値やテクスチャ,サイズなどの特徴量を取得しました.
「OverlayOutlines」では,オブジェクトの領域設定とGFP染色画像を重ね合わせた画像を取得し,「SaveImages」で保存しておきます.
終わりに
今回は紹介しませんが,得られた特徴量をエクセルファイルで出力し,KNIME Workflowを使ってアゴニストのDose Response Curveを作成しました.
本当に評価系として妥当かどうかは色々と(色々と…!)検討することが必要ですが,予想通り,MaxIntensityやEntropyなどテクスチャの情報を使ってシグモイドカーブを描くことができました.
CellProfiler便利ですね!
最後にpipelineの動画を紹介します.
youtu.be