こんばんは、@PKです。
この記事は創薬 (wet) Advent Calendar 2022の2日目です。
1日目の記事ではAssay Guidance Manualの中のMicroplate Selection and Recommended Practices in High-throughput Screening and Quantitative Biologyから一般的なマイクロプレート選定について記載をしました。
この章の後半ではHigh Content Analysis(HCA)におけるプレートの取り扱いについて説明がされています。今回はHCSイメージングにおけるプレート選定について考慮事項について紹介したいと思います。
HCSという言葉を初耳の方は以下を参考にしてください(大した内容ではないですが…)
www.t-kahi.com
↓はHCSイメージングにおけるマイクロプレートの一般的な考慮事項です。
General considerations when matching a cell model with microplates for HCS imaging
- When possible, use optically-clear, thin-bottom microplates.
- Determine the resolution (magnification) requirements to answer the biological question.
- Decide if cells are “plateable” – do they readily attach?
- Are PDL, ECM, or other matrices required for cell attachment, for cell health, or for the biological process being studied?
- Beware of new or undefined microplate composition materials modulating cellular health (e.g., proliferation, cytotoxicity) or relevant bioactivity.
- Do the microplate well geometric dimensions affect the biology being studied? Consider surface area to support growth and gas exchange needs.
- Are cells or cell objects imageable by HCS imagers? Does the microplate well have clear bottoms for inverted microscope HCS imagers to transmit light?
- Are the cell objects plated in a manner to allow adequate image analysis segmentation?
Microplate Selection and Recommended Practices in High-throughput Screening and Quantitative Biology
この中の1から4についてピックアップして紹介します。
1.可能であれば透明度が高く薄底のマイクロプレートを使用する
使用する予定のプレートがイメージングに耐えられるレベルの薄底であることを確認しておきます。低倍率であれば一般的なイメージング用のポリスチレン(PS)製マイクロプレートで問題ないと思いますが、高倍率の場合はPS製のプレートではなく透明度が高いCOC、COPあるいはガラス製のプレートも考慮します。
2.生物学的な疑問に答えられる解像度(倍率)を決める
評価対象が適切に定量化できる倍率はどの程度かを検討します。倍率を上げることで対象を高解像度で捉えることができますが、その分オブジェクト数が減ってしまいますので闇雲に倍率が高ければ良いというものではないと考えています。設定した表現型が正しく(定量的に!)捉えられるかどうかが重要です。
3.細胞が「plateable」かどうか、つまり容易に接着するかどうかを判断する
細胞が接着か非接着はHCSでのアッセイ系構築において非常に重要です。また、接着の場合でも接着の程度によっては固定化やWash操作で簡単に細胞が剥がれてしまい、正しいイメージングができないケースもあります。細胞の接着が弱い場合は4のような細胞接着因子の検討に進みます。
4.PDLやECM、その他細胞外マトリックスが、細胞接着、健康状態、あるいは生物学的プロセスに必要か
PDL, PLLといった化学的コーティングと、コラーゲンやラミニンといった生物学的コーティングなどがあり、細胞の種類によってはこれらの2次コーティングが必須となります。ただし、上述のようにコーティング条件によって細胞内のシグナルの入り方や遺伝子発現パターンが変わることもありますので、どれが良いかは既報の文献調査や実際の条件検討で判断することを勧めます。
最後に、プレートのインキュベーションについて紹介します。
上図はインキュベーション時おけるマイクロプレートの位置バイアスについて示されています。Aの図ではインキュベーターの置く位置によってプレートの温度むらが生じ、それによってアッセイ時にシグナルの偏りが生じる可能性が指摘されています。細胞にとって温度は重要なパラメーターであり、微妙な温度の違いは特にレポーターアッセイなどでバラツキの原因になることが経験的にも多いです。また、位置だけでなく、プレートを重ねることで上下と中のプレートで温度むらが生じてしまい、結果がばらつくということも生じます。Bの図はその解消法として紹介されており、プレートを3Dプリンターで作った「Microplate hotel」に置くことでインキュベーション条件を均一にする仕組みが紹介されています。どうしてもプレート枚数が多くなるようなアッセイではこのような改善を各社実施して安定性を担保しているようです。
簡単ではありますが、本章の後半のHCAにおけるプレート選定について紹介しました。一般的なアッセイでもプレート選定は重要ですが、特にHCAの場合ですと、プレートの材質がイメージング結果にモロに影響するので、特に気をつかってプレート検討している方が多い印象です。今回の内容についてご興味がある方は是非Assay Guidance Manualにも目を通してみてください。