こんばんは,@PKです.
創薬 Advent Calendar 2018がまだ空いていたので,駄文ですが25日目の記事として載せてさせてください.
今日はスクリーニング技術の一つである,high content screening(HCS)と,HCS用画像解析ソフト CellProfilerについて簡単に紹介したいと思います.
まさに今,自分もHCSについて学んでいるところなので,至らない点も多々ありますがご了承ください.
まず初めに,High Content Screening(HCS)というスクリーニング技術についてですが,この後の内容は以下のHCSの評価系構築に関するレビューのイントロダクションから一部抜粋して紹介します.
そのうち時間を見つけてこの記事をより詳細に解説したいですね…(まだまだ全部読めていないので…)
High Content Screening(HCS)とは,何千もの化合物やsiRNAライブラリーを処理した細胞内の生理活性を測定することができる自動顕微鏡スクリーニング技術のことを指します.
細胞や細胞内のオルガネラ,タンパク質などを複数の蛍光物質で染色をし測定することからhigh contentと呼ばれています.
HCSは,high content analysis(HCA)やhigh content imaging(HCI),image cytometry(IC)など様々な呼ばれ方をすることがあります.
一般的に,HCA,HCI,ICなどはHigh Throughput Screening(HTS)とまでは大量の評価を行わない,スループットの低いスクリーニングのことを指しますが,HCSの解析部分のことをHCAと呼ぶ人もいます(自分はこの呼び方をするタイプです).
一般的なHTSと違う点として,HTSは1つの活性値をリードアウトとするのに対して,HCSは細胞間や細胞内の小器官,タンパク質の複数の特徴を捉えることができることです.
HCSは薬剤などが細胞内のある小器官や,細胞内の一部の領域で引き起こす薬効を評価することができるのが非常に利点です.
また,これまでの伝統的な2次元の培養細胞を用いた評価系ではなく,初代培養細胞や3次元培養,経時的な時間変化なども評価できることが非常に強みとなっています.
以下の図はHCSに関する論文からの抜粋です. https://www.researchgate.net/publication/269183182_Single-cell_and_multivariate_approaches_in_genetic_perturbation_screens
このように細胞の画像データから,様々な特徴を定量的に抽出することができます.
HCSは,単一のリードアウトによる薬効評価が難しいターゲット(細胞内のあるタンパク質の局在変化や細胞の形態変化)を評価することができるので,創薬プロセスにおいてリード化合物(まだ薬として更なる磨き上げが必要な化合物)の評価などによく用いられます.
HTSでの評価が難しい細胞の形態変化の例としてわかりやすいのは神経突起伸長など細胞の形態が変化するような評価系や,活性化したNF-κBの核内移行などです.これらはHCSを使えば容易に評価することができます.
また,HCSの利点としては細胞や組織の画像を撮影し解析を行うため,薬効評価のリードアウト以外のオフターゲット(細胞毒性や核異常)などを検出することができます.
また最近は共焦点顕微鏡が付いたHCS装置も増えてきており,バックグラウンドが高い画像や厚みのある細胞でも解析することができるようになっています.
さて,万能のように説明をしてきたHCSですが,課題も多くあります.
まずは,大量の画像データの管理です.
画像を撮影することによって生じる大量のデータについて,どのデータを保存するのか,どのデータを捨てるのかは大学・企業を問わず悩むポイントです.
また,一般的なHTSと比較するとS/B比は非常に小さく,安定したデータ分析が難しいという点も特徴です.
そして,もう一つ「画像解析」の困難さがあります.
HCSの機械は様々なベンダー企業が開発を行っており,たいていは各ベンダーの装置に解析ソフトウェアも付属しています.
しかしながら解析ソフトウェアは互換性がないことや,どうしてもうまく目的の特徴を抽出できないといった問題点から,HCS用のフリーソフトの開発も進んでおります.
HCS用フリーソフトの代表例としてCellProfilerがあります.
CellProfilerのサイトは以下のようになっており,左側のExamplesやTutorialsからCellProfilerを使った画像解析の流れを学ぶことができます. 初見でソフトを触っても使い方が全然わからないと思います(自分は全くわかりませんでした)
ソフトのダウンロードは簡単で,左側のDownloadからCellProfilerを入手することができます.
試しに,Examplesからhuman cellというサンプルをダウンロードして解析を流した結果の一部を以下の図に示しています.
左側のPipelineで画像解析のモジュールを組み合わせて目的の特徴量を抽出するということを行っています. また,細胞の認識の結果や,特徴量の定量化などができるようです.
しかしながら,CellProfilerも他のフリーソフトの問題点と共通して,HCS装置に付属している専用ソフトウェアと比べて,操作がしにくく,使い方がわからないということがあります.
今後はKNIMEに加えて,CellProfilerの画像解析の方法などもこのブログで紹介したいと思います.