t_kahi’s blog

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実験に使うマイクロプレートについて:Microplate Selection and Recommended Practices in High-throughput Screening and Quantitative Biology in Assay Guidance Manual

こんばんは、@PKです。

この記事は創薬 (wet) Advent Calendar 2022の1日目です。

今回はAssay Guidance Manualの中のMicroplate Selection and Recommended Practices in High-throughput Screening and Quantitative Biologyに記載されているマイクロプレートの選び方についてを紹介します。

www.ncbi.nlm.nih.gov

スクリーニングの際には多検体を同時に評価するためにマイクロプレートを使用することが多いですが、その選定については意外と見落とされることが多いです。この章ではマイクロプレートの材質や取り扱い、用途ごとに適したプレート選定などがまとまっています。

下の図はアッセイにおける一般的なマイクロプレート選定のフローチャートの例を示しています。

Figure 2: Flowchart for a microplate selection process. From: Microplate Selection and Recommended Practices in High-throughput Screening and Quantitative Biology, CC BY-NC-SA 3.0

まずプレート選定における最初の起点はアッセイ系構築において細胞を使うか(Cell-based)、使わないか(Cell-free)です。例えば細胞を使う場合は、細胞培養用の表面処理(TC処理)を施す必要や滅菌済みであることが条件となります。続いて、見たい現象に応じてアッセイ系と検出方法を決めます。アッセイ系や検出法が決まると材質も決まってきます。例として無細胞系の場合は低吸着プレート(酵素アッセイなど)や高吸着プレート(ELISA)など測定系に応じてプレートの材質を考える必要があります。
その後、スループットに合わせたウェル数やウェル形状、用量などを決めていきます。ウェル数は96よりも385, 1536方がスループットは上がりますが、アッセイ系の感度や精度、設備に応じて決める必要があります。
続いてプレートの色やポリマー、表面処理といったプレート材質を決めていき、最後にプレートのフタやシール、インキュベーション温度などを検討していきます。
ただし、これらの検討は左から右にフローが流れていくわけではなく、最終目標である安定したアッセイ系が構築できるまで繰り返しながら検討することが重要です。

プレートの色と適したアッセイについて、以下表にまとまっています。

Table2 Comparison of microplates by color. From: Microplate Selection and Recommended Practices in High-throughput Screening and Quantitative Biology, CC BY-NC-SA 3.0

一般論になりますが、透明プレートは吸光度測定、白色プレートは発光法やAlphaやTRF法、黒色プレートは蛍光測定やFRET法などが適しています。新しいアッセイ系構築する際はここに記載されている色のプレートから検討を始めるのが良いです。
ただし、以下コラムでも述べられているように、最終的には安定したアッセイができれば良いので、アッセイ系のS\BやZ'値がよければ必ずしも上に当てはまる必要はないです。
https://www.promega.co.jp/pdf/tech150707.pdf

最後に、プレートコーティング条件と適したアッセイ系について以下の表でまとめられています。

Table 4 Comparison of microplate surface treatments. From: Microplate Selection and Recommended Practices in High-throughput Screening and Quantitative Biology, CC BY-NC-SA 3.0

特に細胞アッセイの場合は、TC処理済みのプレートを使うことが非常に重要です。また、細胞の種類やアッセイによっては追加でコーティングをした方が良いケースがあります。
代表的な2次コーティングとしてはPDL, PLLといった化学的コーティングと、コラーゲンやラミニンといった生物学的コーティングなどです。細胞の種類によってはこれらの2次コーティングが必須となるので、アッセイ系構築の際に使用する細胞についてそれらのコーティングを検討すべきか事前調査をした方が良いです。
また、コーティング条件によって細胞内のシグナルの入り方や遺伝子発現パターンが変わることもあるので、これらは丁寧な検討が必要だと個人的には考えています。

簡単ではありますが、プレートの選定のフロー、プレートの色や材質と適したアッセイについて簡単に紹介しました。冒頭でも述べたようにアッセイ系構築の際はアッセイ手法であったり、使う細胞や刺激条件の検討に目が行きがちですが、プレートの選定を間違えると、本当は見えるはずのシグナルを「見えない」とミスリードしてしまいます。
今回の内容についてご興味がある方は是非Assay Guidance Manualにも目を通してみてください。