t_kahi’s blog

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GPCRの空間的なcAMP制御に関する論文について

こんにちは、@PKです.

GPCR受容体と空間的なcAMP制御のメカニズムについての論文が面白かったです.

www.sciencedirect.com

cAMPは、GPCR Gs, Giシグナルの下流で働くセカンドメッセンジャー分子としてよく知られています.
GPCRには様々なリガンド・受容体といった多様性がある一方で、その下流はカルシウムやcAMPなど共通のセカンドメッセンジャーが担っており、細胞内でのGPCRの下流シグナルがどのように制御されているのか(あるいはされていないのか)はあまり研究が進んでいません.
今回の報告では、receptor-associated independent cAMP nanodomains (RAINs)というcAMPナノドメインが、それぞれのGPCRには存在し、空間的にcAMPシグナルが制御されていることを明らかにしました. この結果から、様々なGPCRがRAINsによって下流でシグナル制御を行なっている可能性が示唆されました.

cAMPやカルシウムなどのセカンドメッセンジャーは測定しやすいため、細胞内カルシウム、cAMP量を定量化する確立された手法があります(Tools for GPCR drug discovery | Acta Pharmacologica Sinica).

細胞内でGPCRごとに下流シグナルが制御されているのであれば、Total cAMPの変化は捉えられなくとも、局所的な下流シグナルの活性化が生じており、疾患に重要な可能性があります.また、cAMPに限らず細胞内のセカンドメッセンジャーの局所的な変化が重要だと考えることも自然です.

単純なアゴニスト・アンタゴニストを取りにいくだけであれば特に気にする必要はないのですが、生体内で、生体内のリガンド濃度の条件においてアゴニスト・アンタゴニストがどのような変化を引き起こしているのか(化合物のMoA)は考える幅が広がるのかなと改めて感じた論文でした.