こんにちは,@PKです.
今日はOpen Targetsについて,気になった最近の変更点や,使う際に自身が気をつけていることについて紹介します.
はじめに
以前,Open Targetsについて簡単な記事を書きました.
www.t-kahi.com
Open Targetsは疾患と分子の情報がまとまっているデータベースです. 本当に便利で,仕事内容によっては強力なツールになります(データはAPIからアクセスできますし,すべてダウンロードすることもできます).
先日,Open Targets(Version 3.15.1, Data version 19.11)を久しぶりに使用したのですが,かなり使いやすくなっていました.以前と比べていくつか変更点がありましたので簡単に紹介します.
変更点について
疾患がより細かく分類されていた
MAPK14に関連する疾患を検索した結果を以下に示します.
https://www.targetvalidation.org/target/ENSG00000112062/associations
疾患の分類が前より詳細になっていますね…!
これはOpen Targetsのブログに記載されていましたが,19.11がリリースされてから3,000のnew diseasesが追加されているそうです.
Open Targets Platform: release 19.11 is out
この理由として,Experimental Factor Ontology (EFO)のバージョンをEFO2→EFO3へと変更したからとの記載がありました.
Experimental Factor Ontology (EFO)の参考:
Avoiding confusion in disease biology with ontologies
「Pharmacovigilance」:医薬品の副作用情報の追加
Open Targetsには標的分子や疾患に紐付いて医薬品の情報もあります.
例としてPDE5Aを検索した結果を以下に示します.
https://www.targetvalidation.org/target/ENSG00000138735
上記のようにPDE5Aに関連する医薬品の情報がでてくるのですが,ここでSildenafil(Phase IV=上市されている薬剤)をクリックすると,化合物の詳細のページに移行します.
https://www.targetvalidation.org/summary?drug=CHEMBL192
下にスクロールしていくと,下図のように「Pharmacovigilance」に関する情報として副作用情報が記載されています!
Pharmacovigilanceという言葉は製薬会社以外ではあまり耳にしない方もいると思います.
ファーマコビジランス(Pharmacovigilance)
日本語では「医薬品安全性監視」などと訳されることが多く、世界保健機関(WHO)によって「医薬品の有害な作用または医薬品に関連するその他の問題の検出・評価・理解・予防に関する科学と活動」と定義されている
ファーマコビジランス(ふぁーまこびじらんす)とは - コトバンク
医薬品は臨床試験の際に副作用に関する情報を記載しますが,上市後にも新たな副作用が分かる場合もあります.
Pharmacovigilanceは医薬品の副作用などを含んだ様々な情報を収集し.副作用を予防する活動を指します.
このPharmacovigilanceの項目を見ることで,上市後医薬品の副作用に関する情報を見ることができます.
「Pharmacovigilance」の情報追加については,下記Open Targetsのブログにに記載がありました.
Open Targets Platform: release 19.11 is out
また,Open TargetsのPharmacovigilanceのページについては以下に詳細があります.
Pharmacovigilance - Open Targets Platform Documentation
標的分子の安全性についての情報追加
CHRM3について検索すると,以下のように「Targets Safety」の情報がでてきます.
https://www.targetvalidation.org/target/ENSG00000133019
Publicationの部分に引用元が記載されているので,こちらで情報をチェックすることができます.
標的分子に関する安全性の情報は創薬標的としてはかなり重要なので,便利かと思います.
「Targets Safety」に関する情報は以下のOpen Targetsのブログを参考にしてください.
Using ChEMBL for target identification and prioritisation
個人的に気をつけていること
Open Targetsなど,創薬標的や疾患に関する情報のDBはいくつかあります.
本当に便利なのですが,あくまでも最初の取っ掛かりのためのツールとして使い,「必ず情報の引用元まで遡ってチェックするようにしています.
どうしても情報がまとまっているので,それだけで判断してしまいそうになるのですが,きちんと内容を確認しないとだめな例もあります(特にText mining)
Open Targets使って標的遺伝子に関連する疾患を調べていて,とても便利なんだけどヒットした理由(Genetic association score, Drugs, Text mining, etc.)をきちんと調べないといけない(当たり前なんだけど).Text miningは関係の無い文脈から拾ってしまうこともある.https://t.co/SHQqKj7Z7E
— PK (@t_kahi) January 3, 2020
上記の通りで,Text miningの結果をよく見てみると,関係の無い文脈を元に関連付けをしてしまっているケースが結構あります.
仕方が無いことではあるので,とにかく引用元をきちんと確認するようにしています.
また,標的遺伝子に関連する疾患のヒット理由がDrugsの場合でも,要確認のケースがあります.
TRPV1に関する疾患を調べた例を以下に示しています.
https://www.targetvalidation.org/target/ENSG00000196689/associations
Drugsの部分が1.0(Max score)なので非常に関連性が高いような気がするのですが,薬剤をチェックしてみるとAcetaminophenなのです.
Acetaminophenに関するデータをみると,Mechanism of Actionの1つにTRPV1があることで,上記結果になっていることがわかります.
もちろん,TRPV1-Acetaminophen-疾患とつながるケースもあるかもしれませんが,他の標的分子が疾患には関与している可能性もかなり高いので,表の結果だけでは判断できないなあ,と使っていて感じました.
おわりに
Open Targetsを初めて使ってみたときと比べると更に使い勝手が良くなっていると思い感動しました.
一方で,後半に書いたように,どんなに便利になっても,細かく根拠・引用元をチェックすることは必要かと思います.
うまく活用して創薬活動を進めていきたいですね.