t_kahi’s blog

KNIMEやCellProfiler、創薬に関する記事と,日々のメモです

「クリティカルチェーン」を読みました

こんにちは,@PKです.

クリティカルパスについて知りたかったのと、「なぜ、プロジェクトは予定どおり進まないのか?」というキャッチコピーが良かったのでクリティカルチェーンという本を読みました(今週は締め切りの資料が無くて、心に余裕があった).
全体として物語調で、読んでいて引き込まれました.前作がいくつか出ているのですがこの本だけでも十分勉強になりました.

クリティカルパスというのはプロジェクトにおいてそれ以上縮めることができない工程のことで、クリティカルパス上で遅延が生じるとプロジェクト全体が遅延してしまうため、プロジェクトにとって一番重要な部分になります.

プロジェクトマネジメントにおいてクリティカルパス(経路)とは、必要な時間を積算したときに最長となる一連の活動を意味する。これによって、プロジェクト完了までにかかる最短時間を決定できる。クリティカルパス上の活動に遅延が生じると、プロジェクト完了予定日に直接的な影響が生じる。すなわち、クリティカルパスにはフロート(余裕時間)が全くない。1つのプロジェクトに複数の並行するクリティカルパスが存在することもある。クリティカルパスと並行していてフロートのある経路は、準クリティカルパス、または非クリティカルパスと呼ぶ。
これらの結果により管理者は活動を優先順位付けでき、プロジェクトの管理を効率化できる。そして、活動群をさらに並行に実施できるようにしたり(ファストトラッキング)、クリティカルパスにさらにリソースを投入して期間を短縮させたりすることで、プロジェクト全体をより早期に完了させることもできる。
クリティカルパス法 - Wikipedia

上述のように、クリティカルパスを正しくみつけてそこにリソースを投入し、期間を短縮させることはプロジェクト全体を加速化できるようになる一方で、非クリティカルパスに注力しても(できるところから手を付ける、の類)プロジェクト全体を加速化させることはできないのは直感的にも理解できました.

この本の中で出てくるTOC(Theory of Constraints=制約条件の理論)というのは以下のような考え方です.

制約条件の理論

  1. 制約条件を特定する。
  2. その制約条件を徹底活用する。
  3. ほかの全プロセスをその制約条件プロセスに従わせる。
  4. 制約条件のスループットを底上げする。
  5. もし制約が移動した場合は「1」に戻る。そして、今まで決めていた施策を惰性で継続するのではなく、全て見直さなければならない。 制約条件の理論 - Wikipedia

プロジェクト全体でフォーカスすべき点は少数で、そこに集中して問題解決を行うことで全体のスループットを向上させることができる、と理解しました.

以下備忘録もかねて本の引用とメモを記載します.


プロジェクト・リーダーの言い分にはすべて不確実性が絡んでいる
エリヤフ ゴールドラット. クリティカルチェーン (Japanese Edition) (Kindle の位置No.824). ダイヤモンド社. Kindle 版.

物語の中で、プロジェクトが遅延する理由を調査していくと、担当していたプロジェクトリーダーの意見としては遅延の理由は全て不確実性が原因と主張しています.
実際に自分の少ない経験でも、プロジェクトを進めていくと予想しなかったトラブル(本の中ではマーフィーと呼んでいる)が起き、それを解決するのに時間がかかってプロジェクトが遅延することしか無かったので、そうだよなぁ、、、と感じました .


プロジェクトを構成する一つひとつのステップには、実はセーフティーがたくさん組み込まれている
エリヤフ ゴールドラット. クリティカルチェーン (Japanese Edition) (Kindle の位置No.916-917). ダイヤモンド社. Kindle 版.

これも大変共感しました.自身を振り返ると、プロジェクト内の仕事を見積もるときには、最短で実施できそうな期間よりもバッファー期間を設定して見積もることの方が大半でした.自分の場合、仕事内容は実験業務かつ新規の作業が多いので、全てが仮説通りでうまくいけばすぐ終わりますが、実際は仮説通りに物事は進まず、余計にいくらか時間がかかるのでそれも踏まえて期間を設定していました.
あとは大体、設定した期間よりも前に物事が終わると感謝されるが、期間をすぎるといい顔をされない(どんなに最短で設定しても)ので、結局バッファー期間を見積もりに入れておいた方が楽だった、ということも要因だと思っています.


プロジェクト・リーダーにとって、何がいちばん致命的かと言えば、集中力を失うこと、優先順位を取り違えてしまうことです
エリヤフ ゴールドラット. クリティカルチェーン (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1336-1337). ダイヤモンド社. Kindle 版.

上記は最近同僚にも指摘されてその通りだと感じた部分でした.

経験豊かで色々とアドバイスをくれる同僚がいるのは本当にありがたくて、今の環境に感謝してます.
この数ヶ月くらい優先順位の高い仕事で自分の生活が仕事でかなり圧迫されていて、それがひと段落すると、今度は細かいタスクが隙間時間を埋めるようになり腰を据えて問題を把握するのが難しくなっていました.
そうすると手をつけられる部分から手をつけますという風に考えてしまいがちで、結局一番大きい問題(クリティカルパス)には手がつけられていない、という事態が生じます.

「忙しいほど頭を使わなくなる」と以前言われたことがあるのですが、同じ考え方で、忙しいとタスクの優先順位付け=本当にやらないといけない事を正しく判断できなくなるんですよね.手は動かしているので満足感はあるのですが...


まず、セーフティーを見積もり時間に組み込む方法だが、これには三つの方法が考えられる。しかし、せっかく組み込んだセーフティーが無駄にされる理由もどうやら三つあるようだ。まず学生症候群。ぎりぎり最後になるまで作業に取りかからない。二つ目は、作業の掛け持ち。三つ目は、ステップ間の従属関係。ステップ同士が従属しあっているから、作業が遅れるとどんどんそれが蓄積したり、逆に作業が早く終わってもその分は浪費されてしまう
エリヤフ ゴールドラット. クリティカルチェーン (Japanese Edition) (Kindle の位置No.2509-2513). ダイヤモンド社. Kindle 版.

プロジェクトの各工程でバッファー期間を設けるのにもかかわらずなぜプロジェクトが遅延するのか、について物語で考察している部分でこれも現実でありがちだなあと感じました.この3つの原因は相互に関係していて、大体の人は複数のタスクを抱えていて(2つ目)、そのために自分の中で優先順位をつけて作業を遂行してしまう.その結果、各タスク内では余裕があっても他の作業を優先させる結果として期限ギリギリまで取りかからない(1つ目).そしてどこかで遅延が発生するとそれに引きずられて他の仕事も次々と遅延する(3つ目).実体験ですね...


セーフティーはすべて、クリティカルパスの最後に置きます。各ステップからセーフティーを全部取り去れば、プロジェクト・バッファーを用意するのに十分な時間が確保できます
エリヤフ ゴールドラット. クリティカルチェーン (Japanese Edition) (Kindle の位置No.3057-3058). ダイヤモンド社. Kindle 版.

物語の中でプロジェクトの効率化をはかるために実施されていましたが、ほぼ同じことを上司に言われていたので、ああ、この考え方で物事を進めていきたいのか、とふに落ちました(それだけでもこの本を読む価値があった).
この考え方を実践するためには各工程については最短スケジュールを徹底しているので、そこで遅延が生じる可能性が50%程度出てきてしまいます(今までは80%達成できそうなラインでスケジュールを立てていた).仮に各工程のスケジュールが遅延したとしても、遅延は折込済みで最後のバッファーで吸収できることを確認し、絶対に担当者を責めない、というカルチャーも必須だと感じました.
設定したスケジュールを遅延すると上から怒られるカルチャーだと実践は絶対に無理なので、プロジェクトに携わっている全ての人と、マネージャー内でその辺りの共通認識を持っておくことが重要ですね.


残念ながら、どの会社でもよくあることだ。意外かもしれないが。プロジェクトに関わっている人はたいてい、プロジェクトの完成が遅れることによって毎月どれだけの損失が出るのか、はっきりとは認識していない。
エリヤフ ゴールドラット. クリティカルチェーン (Japanese Edition) (Kindle の位置No.3475-3477). ダイヤモンド社. Kindle 版.

プロジェクトのスケジュールを管理する人がスケジュール遅延によってどの程度損失が出るのかを認識していない、というのも多くの現場で当てはまる気がしました.(少なくとも自分は細かい数字は把握していない)
これも最短でプロジェクトを成功させるためには認識しておいた方がいい点だと思ったので、仕事が始まったら調べてみます.

いい本だったので職場に持っていこうと思い、書籍版も購入してしまいました.

創薬は一人の力だけではできないので、プロジェクトで動くことが必ず必要なのでこの本の考え方は役に立つ、はずです.

連休が明けたらまた仕事がんばっていきましょう〜